いちの木の小屋と山

昭和~~な小屋をリフォームしたり、山やったり畑やったり、猪捕ったり、いろいろやって生きてます

牡蠣工場 ちょっとネタばれ?

 

 横川シネマにて先行上映会

想田和弘監督が来てのトークショーつき

観察映画「牡蠣工場」

行って参りました。

 

想田監督のツイッターをフォローしています。

ということで、

監督が現在社会で起こっていることをどう見るのか

いつも思考の補助とさせていただいています。

その伝え方は、誘導を目的とせず、押しつけがましくなく、

きっと、映画の撮り方もそういった方法なのだろう。

 

と、思いつつ

実際に作品を観たことはありませんでした。

 

満を持しての上映会+ご本人登場。

予約必要なんて気づかなくて

早々に行ったのになかなか入れず

だから、普段は座ることのない最前列に座って結果的に良かった。

想田監督のお顔がよく見えました。

 

 

さて、映画

 

猫のアップから始まり

瀬戸内の情景

観察の名の通り

ふと立ち寄った田舎の情景をぶらぶらと

散歩しながら眺めるよう。

 

「すいません、船に乗せてもらえますか?」

「おう、いいよ」

と、気軽なやり取りがあるかのような。

 

しかし、

牡蠣むきを生業とする人たちを

追っていくのはカメラマンの視線。

その様子を茶化す「むき子」の若い男性。

 

若手事業者の奥さんの仕事に寄って行って

「うわ、カメラ近っ」って言われているところもあったり

普段、注目されるはずのない場所を見られている

照れ、戸惑い、落ち着かない様子が

ひりひりきた。

 

まっとうな距離をかすかに踏み込み入り込んでいて

だから、対象が軽く拒否をしているのに

カメラを回し続ける。

いやぁ~~~~~ツワモノです。

 

想田監督はニコニコとしていて

人の好い

永遠の大学生みたいな感じなのに

こんな時にはぐいぐい寄っていくんですね。

 

これはNHKでドキュメンタリーを撮っていた頃からの

職業的慣れからくるのか?

あえて踏み込む強さを持って

対象にやむなく接近を認めさせているのか?

はたまた、鈍感なのか?

 

「カメラはもう回してくれるな」

と、言われる非常に緊張するシーンが一番

この盛り上がりをつくらない映画の

盛り上がる部分。

「広島では人も死んどるんじゃけぇ」

 

そこで、監督がうにゃうにゃと映画撮らせてちょうだい

こーだしあーだしこーしますからこーしたらいいですか?

と、ぐちゃぐちゃとお願いを続ける。

 

あの背中に向かって何をか言わんや、そんな板になったかのような空気の中で。

 

あーーーもーーー

そこに行って「いいかげんにしろ!!」と、どつきたくなるくらい

緊張した。

身体固くなった。

 

結果、そのままカメラは回り

緊張感からの解放までがフィルムに収められ

ものすごい映像が撮れています。

 

 

 

しかし、私の緊張は解けることはなく。

 

なぜなら、私は普段から日本人と外国人研修生の間にあって

お互いが、理解しあいたい、役に立ちたいという熱望と

どうしようもないすれ違いと、

言葉少ない動きが全てな現場の空気と

何もかもが違い拒絶されているかのような不安を、

いつも引き裂かれるような焼かれるような気持を一緒になって

じりじりとしているから。

 

大げさじゃありません。

くらくらして血の気が引いたよ。

 

 

 

上映後のトークショーで監督は

牛窓では一週間程撮影を行い

90時間ほどのフィルムになったと言われていました。

 

なんと!!

計画性もなく臨んだ、その短い期間の間に

偶然の出来事がいくつも起こる。

 

話してみれば、一番カメラを向けられている男性は

三陸から岡山への移住者であり

原発の爪痕も覗くことになっている。

 

中国人研修生が来ることだってその場で知ったこと

しかも!初めての受け入れで、これ以上ない緊張感ある状況!!

一歩間違えれば笑いごとでない、

しかし、ファニーな偶然も撮れています。

 

そして、一番の偶然性の恐ろしいところは、

 

「あの場に行くまで、広島の事件は知らなかった」

と、仰る想田監督!!!

 

私は「ファッ~????」というでっかいため息を漏らしてしまったのですが、

知らなかったからこそ、

まっさらな目であれを撮れたのであり、

知っていたら何かよりの視線、怖気けた視線になっていたかもしれず、

おい!そこまでもが偶然かい!!!

と、驚くほどの引き寄せの力。

 

「ニューヨークにいたので知らなかった」なんて言い訳めいてたけど

それは偶然を撮るための

天の必然的采配だったのかも?

な~~んて想ったりもする

恐るべき想田監督の偶然引き寄せ力なのでした。

 

ま、その後一日で、マジで撮影禁止になったそうですけどね。

十分一本の映画が撮れてしまっていた。

 

 


岡山県のあるカキ工場を活写したドキュメンタリー!映画『牡蠣工場』予告編

 

 

 

御存じない方のために、広島の事件を貼り付けます。

 

江田島中国人研修生8人殺傷事件 - Wikipedia

 

「事前のリサーチを自分に禁じている」と言われていましたが、

結果、

良いもの観せていただきました。

 

この映画はストーリーではなく

そこに映された人の表情や空気を観るのが見どころなので

ネタばれっていうのはないよねぇ。と、思う。

 

監督が「カメラは動きの美しい人に惹きつけられる」

と仰る通り、

一番カメラを向けられている男性の無駄のない動きに

私の目は吸い付いておりました。

 

 

是非、観ていただきたい

切り口したたる作品でした。

 

 

 

 

蛇足

 

江田島では現在、インドネシア人実習生を受け入れています(多分、今も)

そこでは、通訳を探していると、人探しに困っているということで

私にもお誘いが来たのですが

即座に「牡蠣は嫌」と断った、ということがありました。

 

なぜなら、そのような技術研修とは名ばかりの現場に人を入れている

送り出し機関はブローカー的なところであり、対応が悪く、

集められてくる人材も、学力や理解力の足りない人材が多い。

技術習得に値すると、選抜されて来るのではなく

お金を積んでチャンスを手にしているケースがほとんどでしょう。

日本語教育や契約についての説明もあまく、

すれ違いは、起こるべくして起きていると思われるのです。

 

けれども、この映画を観たことで、

私が一枚かむことによって、少しでも、彼らの緊張が和らぐかもしれない。

厳しい現場仕事への理解を、少しは手助けできるかもしれない。

滞在を耐えることのできるモチベーションを得る、見方を伝えられるかもしれない。

と、思ったのでした。

 

そして、実習生と関わることのない環境にある人であっても

移民問題を考えるきっかけになる映画でもある、

と思います。